「高齢の親と同居する」と聞くと、まず気になるのが生活費の負担をどうするかですよね。
親世帯に同居するのか、子世帯の家に迎え入れるのかでも、必要となる支出や話し合うべきポイントは変わってきます。
結論から申し上げると、「決まりはない」ので「話し合ってお互い納得するルールを決める」ということが重要です。
この記事では、高齢の親と同居するときの生活費の決め方を、具体的な相場や実例を交えながら解説します。
- 親と同居するとき、生活費はどうすべき?
- 親の家、子の家の2パターンで解説
- みんなの実例をもとにお手本を紹介
- 生活費に贈与税はかからない!ポイントも紹介
メリットや注意点もあわせて紹介していくので、同居を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
高齢の親と同居するときの生活費はどうする

同居生活において「どこまで負担するか」「どう分担するか」は、意外とデリケートな問題です。
まずは、子が親世帯の家に同居する場合と、親が子世帯の家に同居する場合とで、それぞれどのようなお金のやり取りが行われるのか見ていきましょう。
- 子が親世帯の家に同居する場合
- 親が子世帯の家に同居する場合
- 同居する時の生活費の相場を確認
- 親世帯から生活費をもらうならいくら?
- みんなはどうしてる?気になる実例を紹介リスト
それでは、ひとつづつ解説していきます。
子が親世帯の家に同居する場合

親がもともと住んでいる家に一緒に暮らすケースです。
家賃やローンの支払いがない場合も多いため、生活費の大半を子世帯が負担しているケースがよく見られます。
- 子が生活費を払う代わりに、家事は親が担当
- 折半や別会計にする
- 親が子に生活費を渡すパターンも
子が生活費を払うかわりに、家事は親が担当する
親世帯の家で生活するぶん、家事をお願いする代わりに食費や光熱費などは子が支払う、という分担もあります。
親としても「住んでもらっているし、家事は負担してあげたい」という思いがあるようです。
折半や別会計にする
「家にお金を入れてほしい」という親の希望があるなら、光熱費や食費を折半したり、各自の分だけを負担したりする方法もあります。
たとえば「食費は全員分を子が立て替えるけれど、光熱費は半分ずつ」といった具合です。
最初に細かく決めておけばトラブルも起こりにくいでしょう。
親が子に生活費を渡す場合もある
経済状況や親子関係によっては「使うお金はすべて子に任せて、親は通帳を預ける」ということもあります。
毎月決まった額を子世帯が管理し、生活費や日用品などを一括で支払うパターンです。
負担割合や方法はいろいろあるとはいえ、いちばん大切なのはお互いが納得できる形であることです。
金銭面だけでなく、家事や介護の分担についても話し合いをしておくと、同居生活のトラブルを未然に防ぎやすくなります。
親が子世帯の家に同居する場合

親が引っ越して子の家に住むケースでは、これまで暮らしていた家を手放すか、空き家のままにするかといった選択肢も出てきます。
そのため、引っ越し費用や家の管理費用など、意外な出費が生じることもあります。
- 親から生活費をもらう
- 親が支払いをしないケースも
親から生活費をもらう
一般的には、食費や光熱費の負担として5万円前後を親に負担してもらうパターンが多いようです。
親が年金生活や退職後で収入が限られている場合は、子が家賃やローンを負担し、親は食費だけ支払うといった形にすることもあります。
親が支払いをしないケースも
親の経済状況が厳しかったり介護が必要になっていたりすると、生活費をもらわずに同居する場合も珍しくありません。
「せっかく来てもらうなら負担をかけたくない」という子の希望もあれば、「年金の範囲で病院代を払うのが精一杯」という親の事情もあります。
もしお金をもらうのが難しいのであれば、「家事を手伝ってもらう代わりに生活費はゼロ」「外食時に支払いをしてもらう」といった形でバランスをとるのもひとつの方法です。
同居する時の生活費の相場は?

子と親が一緒に暮らす場合、1人増えるだけならそれほど家計に影響はないと思われがちですが、実際にはどれくらい見ておくと安心なのでしょうか。
- 単身者の平均支出から考える
- 家族4人で暮らす場合は18万~19万円
単身者の平均支出から考える
総務省の家計調査によると、単身世帯の平均的な食費は4万円前後、水道光熱費は1万円ちょっとというデータがあります。
ソースを提示
そこから考えると、1人につき5万円ほど負担してもらえれば安心、というのがひとつの目安です。
ただし、高齢者は医療費や介護費用がかかる可能性もあるため、あくまで「基本的な生活費」として考えておくと良いでしょう。
家族4人で暮らす場合は18~19万円
両親2人と子世帯2人の合計4人暮らしになる場合、月の生活費は18~19万円ほどが相場といわれています。
たとえば2人以上の世帯での平均的な食費、水道光熱費、日用品費などを合計すると、1人あたり4万〜5万円程度になることが多いです。
親が家賃やローンのない家に住んでいるケースなら、子世帯がその分を生活費に回して折半してもいいですし、親世帯の年金から一部負担してもらう形でもいいでしょう。
まずは「お互いの収入や家計の状況」に合わせて柔軟に考えるのがコツです。
親世帯から生活費をもらうならいくら?

親世帯が「子の家に住む代わりに毎月生活費を支払う」というとき、具体的にはいくらもらうのがいいのか迷う人も多いのではないでしょうか。
実際、世間の声を見てみると「1人あたり毎月2〜5万円」という回答がよく見られます。
- しっかり相場どおりにもらう場合
- 状況や関係性によってはゼロ円
しっかり相場どおりにもらう場合
たとえば食費や光熱費だけで5万円前後、これに医療費や介護費用は親の年金で支払う、というパターンです。
家の維持費やローンがあるなら、そこに上乗せして負担してもらうこともあります。
状況や関係性によってはゼロ円も
「長年一緒に暮らしたいと思っていたから」「実際の負担増がそこまで大きくないから」などの理由で、お金は一切受け取っていないケースも少なくありません。
代わりに家事や育児のサポートをしてもらったり、買い物や外食の支払いをお願いしたりといった工夫がされています。
みんなはどうしてる?気になる実例を紹介
実際のところ、同居における生活費の負担は各家庭でバラバラです。
独自の調査によると、実家暮らしの20〜30代のうち約7割が「お金を入れている」という結果が出ていますが、その金額も3〜4万円が平均的とのことでした。
逆に、親に十分な資産がある場合は「子にお金を貯めさせたい」という思いから一切受け取らない親御さんもいます。
一方、「親の資産を活用するほうが、相続税対策になることもある」と考え、親がお金を出すパターンも見られます。
親子の経済事情や暮らし方によって大きく変わるため、「うちはどうするのがベストか?」をよく話し合い、柔軟に決めることが大切です。
ここからは、実際にどれくらいの収入の人が、どのようなルールで生活費を分担しているかの具体例を3つ紹介していきます。
- 例1:20代・年収300万円台の会社員の場合
- 例2:30代夫婦・合計年収700万円の場合
- 例3:40代・子世帯の合計年収1,000万円以上の場合
例1:20代・年収300万円台の会社員の場合
- 家族構成・状況
- 本人(長女・25歳・未婚)
- 親(母・60代)
- 親世帯の家で同居
- お金のやり取り・ルール
- 本人は手取り月収20万円ほど
- 家に毎月3万円を入れている
- 食費・光熱費は3万円から支出(不足分は母が負担)
- 携帯代や交通費などは本人が個別に負担
- ポイント・背景
- 母親はパート収入と年金をあわせて月15万円ほど
- 「子には貯金してほしい」という母の思いもあり、3万円という負担額に落ち着いた
- 家事は掃除・洗濯を母が担当し、本人が仕事帰りに食材を買ってくる役割分担を実施
ひとこと
「あまり稼ぎが多くないうちは、家に入れる金額は少なめでOKだよ」と母が理解してくれる場合もあります。お互いの収支をざっくり把握して納得できれば、負担額は3万円程度に落ち着くケースが多いようです。
例2:30代夫婦・合計年収700万円の場合
- 家族構成・状況
- 本人(長男・35歳・正社員)+妻(30代・パート勤務)
- 親(父70代・母60代後半)
- 親が子の家に引っ越して同居
- お金のやり取り・ルール
- 子夫婦の合計手取り月収50万円ほど
- 親は年金月額が夫婦合わせて15万円程度
- 親からは毎月5万円を受け取り、食費・光熱費の一部にあてる
- 医療費・介護サービス費用は基本的に親が負担
- ポイント・背景
- もともと親が地方の戸建てに住んでいたが、子宅の近くの病院に通うため同居を決断
- 親が「子のローン負担が少しでも楽になるなら」と毎月5万円を出してくれる
- 家事は親が手伝える範囲で参加し、夫婦の負担も分散
ひとこと
夫婦がある程度収入を得ている場合、「親から生活費はもらわずに受け入れる」選択肢もあります。しかし、医療費や急な出費も想定して、月5万円を負担してもらうことでトラブルを避けているそうです。「親に手伝ってもらうことで、こちらも仕事がしやすい」といったメリットを感じています。
例3:40代・子世帯の合計年収1,000万円以上の場合
- 家族構成・状況
- 本人(長女・42歳・正社員)+夫(40代・正社員)
- 親(母70代後半・要介護1)
- 親の家で同居開始
- お金のやり取り・ルール
- 子夫婦は合計手取り月収65万円ほど
- 親は年金月額が10万円ほど
- 親には生活費を負担させず、食費・光熱費はすべて子夫婦が支払い
- 介護サービスの利用料・通院費を親自身が負担している
- ポイント・背景
- 母が持ち家(ローン完済済み)で暮らしており、「家賃がかからないのだから生活費は私たちが出すよ」という子の判断
- 親の認知症リスクやうつ状態が心配だったため、子夫婦が同居を決断
- 将来必要になるかもしれない介護費用を見据え、子夫婦が貯金を増やして備えている
ひとこと
収入に余裕がある場合は「親から生活費はもらわない」「代わりに介護費用はある程度親が負担する」というやり方を取る家庭もあります。母の家をリフォームする必要が出てきたときも、親子でうまく協力して費用を出し合えそう、とのことです。
これらの実例からわかるように、どの家庭でも同居にかかる生活費のルールは「お互いの収入バランス」「親の資産や年金」「介護の有無」「家事の分担」などによって大きく変わります。
同居をスムーズに進めるためにも、まずは親子で具体的に収支を把握し、負担の割合や担当する家事などをはっきり話し合うことが大切です。
最初に線引きをしておくと、あとになって「こんなはずじゃなかった」と気まずくなるリスクが減りますよ。
高齢の親と同居している場合、生活費に贈与税はかからない
「親から生活費をもらうと贈与税が発生するかも」と不安になる方がいますが、税法上は“通常必要な生活費”であれば非課税となります。
とはいえ、実際に贈与税がかからない具体的な条件や注意点は押さえておきたいところです。
- 生活費や教育費は贈与税が非課税
- 非課税とはいえ、注意点もある
- 実親と同居するとストレスが溜まることがある
- まとめ|高齢の親と同居するとき生活費の決め方
生活費や教育費は贈与税が非課税
相続税法では、親子のように扶養義務のある間柄であれば、通常必要と認められる生活費や教育費に関しては贈与税が課税されないと定められています。
たとえば、毎月5万円ずつ生活費を受け取っている場合でも、それが純粋に食費や光熱費などの支払いに充てられているなら、贈与税の対象にならないのです。
さらに住宅の購入費や結婚・子育て・教育のための資金を支援する場合にも、一定の要件を満たせば非課税となる特例が用意されています。たとえば「結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度」や「教育資金贈与の非課税制度」などが代表的です。
ただし、これらの制度を利用するときは期限や対象年齢、用途などの細かな条件が設定されているため、適用を受ける際には必ず最新の情報を確認してください。
非課税とはいえ、注意点もある

生活費として受け取ったお金を、投資や不動産の購入などに使ってしまうと、税務署から“生活費の範囲を超えた贈与”とみなされる場合があります。
また、親子間のお金のやり取りだとしても「貸し借り」の形にするなら、きちんと金銭消費貸借契約書を交わし、返済期間や金額を決めて返済を実行する必要があります。
形式だけではなく、実際に利息や返済が行われているかどうかもチェックされるため、曖昧にしていると贈与認定されるリスクがあります。
実親と同居するとストレスが溜まることがある

お金の面以外にも、実の親との同居生活は知らず知らずのうちにストレスを溜めてしまうものです。
生活習慣の違いや、親が年齢を重ねることで生じる体調や心の変化、さらには介護の問題など、予想外の出来事が次々と起きる可能性があります。
「ちょっと気軽には聞けないけど、みんなこんなときどうしてるの?」と思うことが出てきたら、以下の記事もぜひ読んでみてください。
同居生活での悩みやストレスを軽減する工夫を詳しく紹介しています。


まとめ|高齢の親と同居するとき生活費の決め方
高齢の親との同居では、生活費の負担をどう分担するかが大きなポイントです。
親と同居する場合、子と同居する場合でも、家賃や光熱費、食費などの支払いルールはそれぞれ異なります。相場を目安に話し合ったうえで、お互いの収入や状況に合った負担方法を決めましょう。
また、同居ではお金の面だけでなく、家事や介護の分担、贈与税の有無など考慮すべき点が多々あります。
事前に具体的なルールを決めておけば、「こんなはずじゃなかった」というトラブルを防ぎやすくなるはずです。くれぐれも話し合いを後回しにせず、無理のない範囲で納得のいく同居生活を目指してください。
以下に、本記事で紹介した内容をまとめました。
- 同居費用は「親がいる家」「子の家」で変わります。
- 親と同居するなら家事や介護の分担も決めましょう。
- 親子それぞれの収入状況を把握して話し合うことが大切。
- 子が生活費を払うかわりに家事を親が担うケースあり。
- 親の年金額や資産を踏まえて柔軟にルールを設定します。
- 生活費の相場は単身なら月5万円、4人家族なら月18万円。
- 「もらわない」「折半」「一部のみ負担」など多様です。
- 贈与税は通常の生活費なら非課税になる場合が多いです。
- 生活費を投資や不動産購入に回すと課税の恐れがある。
- 「金銭消費貸借契約」で親子の貸し借りを明確化します。
- 親の介護や医療費も事前に考慮して負担ルールを検討。
- 親に十分な資産があれば子の貯金を優先する選択も。
- 実例を参考に、それぞれの家庭に合った方法を選択。
- 細かい負担割合は最初に決めておくとトラブル減少。
- 納得できるルールと会話こそ円満同居への近道です。
まずは気負いすぎずに家族でじっくり話し合い、お互いにとって納得のいく生活費の決め方を探してみましょう。